みなさんは、フェアトレードという言葉を聞いたことがありますか?最近日本でもフェアトレードのコーヒーやチョコレートなどが売られているのを良く見かけるようになってきました。
フェアトレードは生産者や労働者に対して、公正な取引条件を提供し、持続可能な開発を支援することを目的とした取引の仕組みのことです。
ここではフェアトレードがエシカルである理由を詳しく解説し、生産者の公正な賃金から環境保護まで、フェアトレードがどのように持続可能な社会に貢献しているのかを探っていきます。
フェアトレードとは?
フェアトレードの基本的な定義と目的
フェアトレード(Fairtrade、公正な貿易)とは、途上国の経済的・社会的に弱い立場にある生産者や労働者が、先進国の消費者と対等な立場で行う貿易の仕組みです。適正な価格で原料や製品を継続的に購入し、公正な賃金の支払いや労働環境の改善を通じて、生産者の生活向上と自立を支援することを目的としています。

フェアトレードはエシカルな取引
フェアトレードがエシカルな取引として注目されるのは、発展途上国の生産者に公正な賃金を支払い、児童労働を防止し、環境保護に配慮するなど、持続可能な社会を実現するための仕組みだからです。消費者は、こうした製品を選ぶことで、貧困削減や社会的公正に貢献できます。
フェアトレードがエシカルな理由について以下に詳しくみていきましょう。
フェアトレードがエシカルな理由
①生産者への公正な賃金

フェアトレードが生産者に提供する公正な賃金とその重要性
フェアトレードの最も重要な原則は、途上国の生産者や労働者に「公正」な価格や賃金を支払うことです。労働者には、最低賃金を超え、生活賃金と呼ばれる、尊厳を持ち、家族とともにまともな生活を送るために必要な賃金が支払われます。生産者に対しても、人間らしい生活を維持できる価格が求められますが、同時に市場で販売が継続できる価格であることも重要です。フェアトレードは慈善事業ではなく、持続的なビジネスであるため、支払う価格や賃金には限界があり、固定的ではなく、交渉と見直しを通じて決定されます。
低所得地域の生活改善への貢献
フェアトレードでは、生産者や労働者に適正な賃金や価格が支払われます。これにより、彼らが安定した収入を得て、貧困から脱却するための基盤を築くことができます。
またフェアトレードの収益の一部は、地域社会の発展に投資されます。これにより、学校や医療施設の整備が進み、子どもたちが教育を受けられるようになり、住民が必要な医療を受けられる環境が整います。
生産者や労働者が協同組合や労働組合を通じて協力し、より良い取引条件を確保することができます。これにより、地域全体の団結力が高まり、コミュニティが経済的にも社会的にも強化されます。
フェアトレードの長期的かつ安定した取引は、生産者が市場に依存せずに自立する力を育みます。これにより、地域全体が経済的に安定し、持続的な発展が可能になります。
②労働環境の改善
労働者の権利保護や労働環境の改善に寄与
フェアトレードでは、生産者が借金を避けるために、売買契約時に代金の一部を前払いします。また、長期的かつ安定した取引を通じて生産者が貧困から脱却できるよう支援し、直接的な取引を重視しています。さらに、生産者や労働者が公正な条件で取引できるよう、協同組合や労働組合の結成を支援し、民主的で透明性のある組織運営を助言します。これにより、生産者の自立を促進し、持続可能なビジネスとしてのフェアトレードを実現しています。
児童労働や搾取労働の防止
フェアトレード認証を受けるためには、児童労働や強制労働を禁止する厳しい基準を守る必要があります。これにより、生産者や労働者が安全で公正な環境で働けるようにしています。認証機関は定期的な監査と審査を通じて、労働条件が基準を満たしているか確認します。不正が発見された場合、改善を求めるとともに、認証が取り消されることもあります。
労働者に公正な賃金を支払うことで、家族が子どもを労働に従事させる必要がなくなり、子どもたちが学校に通えるようになります。これにより、児童労働を未然に防ぎます。
またフェアトレードは、生産者やコミュニティに対して、児童労働の害や搾取労働の問題について教育と啓発を行います。これにより、コミュニティ全体で児童労働を防ぐ意識を高めます。
これらの取り組みを通じて、フェアトレードは児童労働や搾取労働の根絶に貢献しています。
③環境保護への貢献
フェアトレードが推進する持続可能な農業と環境保護の取り組み

フェアトレードは、有機農法や環境に配慮した農法を推進しています。これにより、農薬や化学肥料の使用を減らし、土壌や水源の保護に努めます。
また森林伐採や水資源の過剰利用を防ぐため、持続可能な資源管理を導入します。これにより、生態系の保護と自然資源の持続的な利用を図ります。
さらに気候変動に対応するため、二酸化炭素の排出削減や温暖化対策を実施します。また、気候変動に強い作物の導入など、農業の適応策も推進します。
生産者に対して持続可能な農業技術や環境保護の重要性についても教育し、必要な支援を提供します。これにより、地域全体で環境保護の意識を高めます。
これらの取り組みにより、フェアトレードは持続可能な農業と環境保護を実現し、次世代のために地球環境を守ることを目指しています。
フェアトレード認証が環境に与えるポジティブな影響
フェアトレード認証では、森林伐採の禁止や生態系の保護が推奨されています。これにより、地域の生物多様性が守られ、自然環境が健全に保たれます。
また有害な農薬や化学肥料の使用が制限されており、これにより土壌や水質の汚染を防止します。結果として、農地の長期的な肥沃性が保たれ、周辺の生態系への影響が軽減されます。
さらに持続可能な農業技術の採用により、水の効率的な利用が奨励されます。これにより、水資源の過剰利用や枯渇を防ぎ、地域の水循環が維持されます。
フェアトレード認証は、気候変動に配慮した農業を推進しており、例えばアグロフォレストリー(森林農法)などを奨励します。これにより、炭素の吸収が促進され、温室効果ガスの排出量が削減されます。
生産過程においても廃棄物の適切な管理とリサイクルが求められるため、廃棄物が環境に与える負荷が減少します。これにより、農業活動による環境汚染が抑制されます。
④地域社会の支援
フェアトレードでは、公正な価格での取引が行われるため、生産者や労働者に安定した収入が保証されます。この安定収入により、地域社会の経済が活性化し、家計が安定します。

フェアトレードから得られたプレミアム(追加の資金)は、学校の建設や教育プログラムの資金として使用されます。これにより、子どもたちが学校に通いやすくなり、教育水準の向上に寄与します。
プレミアムの一部は、医療施設の建設や医薬品の購入、予防接種プログラムの実施など、地域の医療サービスの改善に充てられます。これにより、住民の健康状態が向上し、医療へのアクセスが改善されます。
フェアトレードの資金は、道路や橋、給水施設などのインフラ整備にも使用されます。これにより、地域の交通や水供給が改善され、生活の質が向上します。
フェアトレードは、地域の生産者組合や労働組合の結成を支援し、住民が協力して自らの権利を守り、生活を改善する力を養います。これにより、地域社会が持続可能な発展を遂げるための基盤が強化されます。
フェアトレードは、女性の権利を尊重し、女性が教育を受けたり、経済活動に参加したりする機会を増やします。これにより、ジェンダー平等が進み、地域全体の社会的進歩に寄与します。
フェアトレードはこのように、地域社会全体の生活水準を向上させ、持続可能な発展を支える重要な役割を果たしています。
フェアトレード製品の具体例と購入方法
具体的にフェアトレードの商品としては、主にコーヒー・チョコレート・紅茶・バナナ・はちみつ・衣類、繊維製品・工芸品・化粧品などがあげられます。


上の画像は日本のフェアトレード商品の多くが承認を受けているフェアトレード認証機関のマークです。
左が国際フェアトレード認証ラベル、右がWFTO(世界フェアトレード連盟)保証ラベルです。
このマークが商品に記載されているとフェアトレード商品だと一目瞭然なので分かりやすいです。
認証を受けていなくても独自のルートでフェアトレードとなる商品も多く売られています。

ブランドをご紹介すると、People Treeは食品から衣類など、幅広いフェアトレード商品を扱っています。
写真は最近出たようかんですが、滋賀にもこの絵柄のチョコレートは色んなお店で売られるようになったので、見かけたことがある方もいるかもしれません。ネットからも購入することができます。

第三世界ショップもフェアトレードの商品を扱うブランドです。こちらの「カレーの壺」というカレーの素は、知っている方も多いかもしれません。他にもチョコレートや紅茶、ハンドクラフト品なども販売しています。こちらもネットから購入することができます。

滋賀でフェアトレードの商品を多く扱っているお店としては、大津市北比良にある「ヒラスイ」さんがあります。
調味料や洗剤などオーガニックのものもあるサステナブルでエシカルなお店さんです。
[ヒラスイさんの取材記事はこちらから]
【大津市】なかなか手に入らないエシカルな食品や日用雑貨が買える素敵なお店が北比良にありました

他にも大津市浜大津にある大津市市民活動センターの一角にはBOXSHOPというフェアトレード商品を紹介している場所があります。
[BOXSHOPの取材記事はこちら]
【大津市】パレスチナ支援のオリーブオイルを始め様々なフェアトレード商品を扱うBOXSHOPが浜大津に
フェアトレードとエシカル消費の未来
フェアトレードは、より多くの消費者や企業が倫理的な取引を重視するようになるにつれて、未来に大きな可能性を持っています。
フェアトレードの未来の可能性
例えばフェアトレード製品に対する需要が増加することで、より多くの生産者が公正な取引に参加できるようになります。これにより、世界中の貧困地域の生活水準が向上し、貧困削減に寄与します。
フェアトレードは、持続可能なビジネスモデルとして他の業界にも影響を与える可能性があります。倫理的なサプライチェーンが標準となれば、環境保護や人権尊重がより広く実践されるようになります。
また消費者がフェアトレードを通じて自分の購買行動が世界に与える影響を理解することで、エシカル消費が広がり、持続可能な経済の発展が促進されます。
消費者としてエシカル消費を続ける方法
消費者としてエシカル消費を実践し、フェアトレードをサポートするためには、以下の方法が考えられます。
- フェアトレード製品を選ぶ
日常的に購入するコーヒー、チョコレート、衣類などでフェアトレード認証製品を選びましょう。これにより、消費行動が途上国の生産者を直接支援することになります。
2.認証マークに注目する:
商品を購入する際に、フェアトレード認証マークが付いているか確認しましょう。このマークがある製品は、倫理的に生産され、販売されていることを保証しています。
3.情報を広める:
フェアトレードやエシカル消費の重要性について、家族や友人、SNSなどを通じて情報を広めましょう。意識を共有することで、コミュニティ全体がエシカル消費に関心を持つようになります。
4.ローカルコミュニティやイベントに参加する:
地元のフェアトレードショップやエシカル消費に関するイベントに参加し、知識を深めましょう。また、ローカルな取り組みを支援することで、地域全体のエシカル消費を促進できます。
5.購入を慎重に考える
必要なものを必要な量だけ購入するよう心がけ、浪費を避けることもエシカル消費の一部です。これにより、環境負荷を減らし、持続可能なライフスタイルを実践できます。
フェアトレードの未来は、私たち消費者の行動にかかっています。日々の選択を通じて、世界をより公正で持続可能な場所にしていきましょう。
まとめ

フェアトレードについて、定義や内容から、フェアトレードがエシカルな理由やフェトレードの未来の可能性について見てきました。
フェアトレードを選ぶことは、貧困削減や労働環境の改善、環境保護などを支援することにつながります。公正な価格での取引を通じて、生産者や労働者が自立し、持続可能なコミュニティを築く手助けができるため、私たちの消費行動が社会全体にポジティブな影響を与えます。これにより、持続可能で公正な未来を築くことが可能になります。
ぜひみなさんもこれから買い物の際にその商品がどんな背景で作られているかに関心を持っていただけたらと思います。可能な限り、フェトレードの商品を選んだり、そもそもの購入をよく検討したりしてエシカル消費を心がけることで、持続可能な未来を一緒に作っていければと思います。
【参考】
【こどもにもわかりやすく】フェアトレードとは? 定義やしくみ、関連用語まとめ付き | MIRAI Times|SDGsを伝える記事が満載|千葉商科大学 (cuc.ac.jp)
フェアトレードとは? | シャプラニール=市民による海外協力の会 (shaplaneer.org)
wko-202306_05.pdf (kokusen.go.jp)
フェアトレードとは? 3種類のフェアトレードと児童労働の関係 | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE(エース) (acejapan.org)
フェアトレードでできる気候変動対策とは?【インタビュー】フェアトレード・ラベル・ジャパン 中島佳織さん | グリラボ (igrid.co.jp)
消費者も知っておきたい、フェアトレードのメリットとデメリット! 現状と問題点は? | MIRAI Times|SDGsを伝える記事が満載|千葉商科大学 (cuc.ac.jp)
フェアトレードタウンとは?日本と世界の取り組み事例、メリットを解説 – SDGsメディア『Spaceship Earth(スペースシップ・アース)』
労働者の権利 - Workers’ rights -|フェアトレードのインパクト|fairtrade japan|公式サイト (fairtrade-jp.org)