プラスチックごみが海を脅かす理由と私たちにできること

私たちが日常生活で使うプラスチック製品の多くは、最終的に適切に処理されると思われがちです。しかし、現実には、毎年約800万トンものプラスチックごみが海に流れ込んでおり、このままでは2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるとの試算もあります。これらのごみは、美しい海を汚すだけでなく、海洋生物の命を脅かし、私たち人間にも深刻な影響を及ぼしています。

この記事では、プラスチックごみが海に与える影響とその原因、そして私たち一人ひとりができる解決策を一緒に考えていきましょう。「海の未来を守るために、今できること」を見つけていきませんか?

目次

プラスチックごみが海に与える具体的な影響

生態系への影響

● 海洋生物への害:マイクロプラスチック、誤食、絡まり
海に漂うプラスチックごみは、さまざまな形で海洋生物に被害を与えています。プラスチックが劣化して微細化したマイクロプラスチックは、プランクトンや魚類に誤って食べられ、体内に蓄積されます。これにより、生物の健康が損なわれ、繁殖能力が低下するケースも報告されています。

また、海洋生物がプラスチック製のビニール袋やペットボトルのキャップを餌と誤認して飲み込むことがあります。ウミガメがクラゲと間違えてビニール袋を食べてしまうのは典型的な例です。さらに、漁網やロープに絡まってしまうこともあり、クジラやイルカが自由に泳げなくなり、命を落とすことも少なくありません。

● 食物連鎖への悪影響
プラスチックごみがもたらす影響は、単なる生物個体の問題にとどまりません。マイクロプラスチックを取り込んだ小魚が、その後、より大きな魚や鳥に食べられることで、食物連鎖全体に影響を及ぼします。この連鎖の最終的な行き着く先は私たち人間です。すでに海産物や塩などからマイクロプラスチックが検出されており、私たちの食生活にも影響を与え始めています。

これらの現実は、私たちが便利さのために生み出したプラスチックが、予想以上に深刻な形で海洋の生態系全体に負の影響を与えていることを示しています。

人間への影響

● マイクロプラスチックが私たちの食卓に戻ってくる
海洋に流れ込んだプラスチックごみが分解されて生まれるマイクロプラスチックは、食物連鎖を通じて最終的に私たち人間の体内に取り込まれる可能性があります。海で生息する魚介類や貝類がマイクロプラスチックを摂取し、その魚介類を私たちが食べることで、知らず知らずのうちにプラスチックが私たちの食卓に戻ってきます。

近年の研究では、海産物だけでなく飲料水、塩、ビールなどからもマイクロプラスチックが検出されており、私たちの日常生活全般に影響が広がっていることが示されています。一見無関係に思えるプラスチックごみが、身近な食事の一部として戻ってくる現状は、深刻な問題です。

● 健康リスクについての研究結果
マイクロプラスチックが体内に取り込まれることで、どのような健康リスクがあるのか、まだすべてが解明されているわけではありませんが、いくつかの懸念が指摘されています。

  1. 化学物質の影響
    マイクロプラスチックには、有害な化学物質が吸着しやすい性質があります。これらの化学物質が体内に取り込まれると、ホルモンの乱れ免疫機能の低下などが懸念されます。
  2. 炎症反応の可能性
    プラスチック自体が体内で異物として認識されることで、炎症反応が引き起こされる可能性があります。特に消化器系や呼吸器系への影響が注目されています。
  3. ナノプラスチックの脅威
    さらに小さなナノプラスチックは、細胞膜を通過して細胞内部に入り込み、細胞レベルでの障害を引き起こす可能性が指摘されています。これが長期的な健康にどのような影響を与えるか、さらなる研究が求められています。

なぜプラスチックごみが海に流れ込むのか?

不適切な廃棄と管理不足の原因


プラスチックごみが海に流れ込む主な原因は、不適切な廃棄管理不足にあります。例えば、プラスチック製品の使い捨て文化や過剰包装は、ごみの増加を助長しています。また、ごみの分別が徹底されていない地域では、廃棄物が適切に処理されず、最終的に河川や海に流れ込むことがあります。

さらに、観光地や海岸沿いでのポイ捨ても深刻な問題です。海風や雨によって軽いプラスチックごみが海へ運ばれることが多く、都市部でもごみ収集が行き届かない場所では、同様の問題が発生します。これらの不適切な廃棄が積み重なることで、海洋へのごみ流出が続いています。


世界と日本の廃棄物管理の課題


世界全体では、プラスチックごみの廃棄方法に関する管理体制の差が顕著です。一部の発展途上国では、廃棄物処理インフラが不十分であり、ごみが適切に回収されず、直接海に捨てられるケースがあります。一方で、先進国でもリサイクル率が低かったり、リサイクルの効率が問題視されたりしています。

日本の課題としては、リサイクル率が比較的高い一方で、多くのプラスチックが「熱回収」(焼却によるエネルギー回収)に依存している点が指摘されています。また、プラスチック削減の取り組みが進んでいるとはいえ、依然として過剰包装や使い捨て文化が根強いという課題があります。


陸からの流出(河川、街のゴミの影響)


プラスチックごみの多くは、河川を通じて海に流れ込んでいます。街中で捨てられたごみが雨水によって下水に流れ込み、河川から海に到達するのです。特に都市部では、道路脇や公園などに放置されたプラスチック製品が川を通じて海に運ばれることが多く見られます。

また、台風や大雨などの自然災害時には、大量のごみが河川や海に流れ込むことがあり、一度流出したプラスチックは回収が難しいため、長期間にわたり環境に悪影響を及ぼします。

私たちにできる具体的なアクション

個人でできる取り組み

● プラスチック使用量を減らす
日常生活の中で、プラスチックの使用を減らすことは、海洋プラスチック問題の解決に向けた第一歩です。以下のようなシンプルな行動が効果的です。

  • エコバッグを持ち歩き、使い捨てビニール袋を使わない。
  • リユース容器マイボトルを活用し、ペットボトルやプラスチック製カップを減らす。
  • ストローやカトラリーなど、使い捨てプラスチックを拒否する選択をする。

これらの行動は小さな変化に見えますが、積み重ねることで大きな影響を生み出します。

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● 海岸清掃活動への参加
地域で行われている海岸清掃活動に参加することも効果的です。私たちが直接ごみを拾うことで、海へのプラスチック流出を防ぐことができます。参加することで、環境問題への意識が高まり、他の人にもポジティブな影響を与えることができます。

  • 定期的な清掃イベントに参加する。
  • 自分で散歩のついでにゴミ拾いを行う。
  • SNSで活動を発信し、仲間を増やす。

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● エシカルな消費選択
プラスチックフリー製品や、環境に配慮した商品の選択は、消費者としての力を発揮できる方法です。以下のような製品を積極的に選ぶことで、企業の行動も変えていくことができます。

  • 紙製や竹製のストロー、歯ブラシなど、代替素材を使用した製品。
  • プラスチック包装を避けた製品や、詰め替え可能な商品。
  • エシカルな企業からの購入を意識する。

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社会全体での取り組み

● 政策や法整備の動向
プラスチック問題の解決には、個人の努力だけでなく、政府の政策や法整備も重要です。

  • 日本では、2020年にレジ袋の有料化が実施され、一定の成果が見られています。また、プラスチック削減に向けたさらなる法整備が進行中です。
  • 海外の事例では、欧州連合(EU)が使い捨てプラスチックの禁止を進めており、ストローや食器類の使用が制限されています。
    これらの政策は、社会全体での行動を促す重要なステップとなっています。

● 企業の取り組みと責任
企業もまた、プラスチック削減に向けた責任を果たす必要があります。以下は具体的な事例です。

  • リサイクルの促進:飲料メーカーが回収したペットボトルをリサイクルして新しい製品を作る。
  • プラスチック削減の宣言:大手スーパーがプラスチック製のレジ袋を完全廃止。
  • 再利用可能な包装材の導入:一部の企業は、製品のパッケージを再利用可能な素材に切り替えています。

美しい地球を次世代に残すために

私たちが今、当たり前のように享受している美しい海や豊かな自然は、未来の世代にも同じように受け継がれるべきかけがえのない財産です。しかし、プラスチックごみによる海洋汚染は、その未来を脅かしています。この問題を解決するためには、私たち一人ひとりの行動と、社会全体の協力が欠かせません。

個人としては、日々の暮らしの中でプラスチック使用を減らし、エシカルな選択をすることが大切です。エコバッグを持つ、リユース容器を使うといった小さな行動が、積み重なれば大きな力になります。そして、地域での海岸清掃やプラスチックフリー製品の利用を通じて、周囲にもその意識を広げていくことができます。

一方で、社会全体としては、政府や企業が責任を持って政策や技術革新を進めることが必要です。より厳しい廃棄物管理の法整備や、持続可能な製品の開発・提供が必要となってくるでしょう。私たち消費者も、エシカルな消費行動を通じて、企業や政策に影響を与えることができます。

個人の力と社会の力が一体となれば、海洋プラスチック問題も解決へと向かうはずです。エシカルな視点で選択をして、美しい地球を未来に残していきましょう。

参考:
環境省_令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第1章第3節 海洋プラスチックごみ汚染・生物多様性の損失

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